国立広島原爆死没者追悼平和祈念館
2007年12月1日訪問
原爆ドームの方から元安橋を渡って平和記念公園に入ると、レストハウスの南側に国立広島原爆死没者追悼平和祈念館がある。
この追悼祈念館は原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づいて長崎とともに開設された。
地上部分には設置理念を示す銘文と原爆投下時刻の8時15分を表すモニュメント。
その周囲には出土した被爆瓦が配されている。
階段を下り、地下1階が入り口である。
そこからさらにスロープを下ってゆく。
通路は時計の逆回りに円を描いている。
時を遡って被爆の瞬間に近づいていく、という意味が込められている。
途中6ヶ所に原爆投下までの経緯や被害の説明がある。
その中には、こんな記述もある。(説明板より)
日本人だけが被爆したのではない、という内容で、日本の加害性につながる記述である。
スロープを下りきったところが平和祈念・死没者追悼空間である。
円形のホールの中心が爆心地を表し、そこから見渡した被爆当時の広島の市街地がパノラマになっている。
パノラマ写真の下には、その方向にあわせて当時の町名が表示されている。
下段になるほど爆心地に近かったことを表現している。
その空間が街に思いをはせる場であるとすれば、そこを通り抜けて次に進んだ遺影コーナーは、人に思いをはせる場である。
原爆死没者の名前と遺影が検索でき、モニターに映し出される。
検索装置の待機画面には、本日までの登録数として15435という数字が表示されている。
しかし、モニターに次々に映し出される遺影の顔を見ていると、原爆の被害とは、何万人という統計の数字でなく、一人ひとりの命の集積なのだということが実感できる。
次の、情報展示コーナーでは、その実感をさらに具体化することができる。
被爆体験記を検索して読めるようになっている。
まわりには関連する遺品なども展示されている。
もっと読み込みたい、もっと原爆被害について知りたいと思えば、体験記閲覧室に進めばよい。
体験記が製本され整理されているし、出版された関連する資料や書籍が置かれている。
証言映像や検索装置による電子資料も見ることができる。
被爆体験談を聞いたり、朗読会を開くことのできる研修室もある。
100名まで収容可能で、特別企画展の会場としても使われる。
直接知る人を被爆で失った人がここを追悼の場とするかどうかは疑問がある。
それはそれぞれのゆかりの場所や慰霊碑でおこなわれることだろう。
だが、被爆のことを知らない(あるいはあまり知らない)人がここに来ることで、原爆による死について知っていくことができるだろう。
知ることで追悼の念を深め、それが平和を希求する心につながる。
隣接する平和資料館とともに見学することで、より効果的な平和学習ができるだろう。
国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は、追悼の場であると同時に、平和学習の機能も持つ平和ミュージアムであるといえる。